積まれた本

ネット小説名作レビュー

秋葉原オーダーメイド漫画ラボ 〜どんな漫画でも作ります〜 by 隙名こと

ジャンル

長さ

  • 長編
  • 131,054 文字
  • 4 時間 22 分ぐらいで読める

あらすじ

 長年の夢をかなえて漫画家になった月並和助は、はじめての連載が打ち切られてあっさり廃業に追い込まれる。彼は絶望するが、守銭奴を自称する美少女、紙透叶絵に秋葉原でスカウトされ、彼女が社長を務める「株式会社オーダメイド漫画ラボ」に入社する。あらゆる漫画をオーダーメイドするその会社でくせのあるクライアントの依頼をこなすうちに、和助は紙透さんの波乱に満ちた過去を知り、彼女に惹かれる自分の気持ちに気づく。

レビュー(ネタばれ注意)

 際立って完成度の高いネット小説だった。プロットもしっかりしているし文章もすごくうまい。分類はライトノベルでいいと思うが、青春小説・ミステリー・恋愛小説・コメディなどの要素もちょっとずつ入っていて、とてもおもしろく読める。文庫1冊分の長さがあって読みごたえもばっちりだ。数多くの仕掛けやドラマを織りこみながら最後まで破綻なく話を進めるバランス感覚もすばらしい。

 上で言ったように、この小説にはちょくちょくミステリーっぽい要素がある。打ち切り漫画家が選ばされるという3枚のカードの都市伝説や、何があるのか分からない社屋の4階などが伏線の例だ。リーダビリティを意識してか比較的すなおな伏線が多いが、話の展開がみんな簡単に予測できるかというとそんなことはない。たとえば、紙透さんが会社を立ち上げた理由が明かされた時には「なるほど、そういうことだったのか!」と思った。月並のスカウトや紙透さんの母の自殺が伏線になっているのだが、驚きを感じられていい仕掛けだった。

 ところで、この話には主要な人物として10人ほどが登場する。そこそこ多いのだが、上手に書き分けられていて1人1人に立派な個性がある。ついでに言うと、主要な女性6人のうち5人までが美少女あるいは美女と述べられていて (1人は故人)、かたよっているようにも思えるが、それぞれの人柄がしっかり描写されているので気にならない。しかし特に丁寧に書かれているのは主人公の月並和助であり、この小説は、漫画一筋に生きてきた彼が挫折から立ち直る話であるとも言える。彼が元漫画家であるという設定も作中で最大限に活かされている。

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2つのコメント

隙名
2016-07-25 00:37:45

はじめまして、隙名と申します。 ラノベタイトルで検索して、このブログに辿り着きました。 とても素敵なレビュー文章を見て、もう本当に 感動してしまいました…。ありがとうございます。 落ち込んだときにはこのレビューを読み返して 元気を出すぞー!ってぐらいに嬉しかったです。 とても励みになります。 あまりに有り難く嬉しくて、ついコメントしてしまいました。 それでは!失礼致します。

Koji
2016-07-25 09:41:01

コメントありがとうございます! また、一方的にレビューを書いたことをご容赦くださりありがとうございました。 このサイトを作ってからはじめてのコメントをいただいて、私もむちゃくちゃ嬉しいです。 私は市販のライトノベルもいくらか読んだことがありますが『秋葉原オーダーメイド漫画ラボ 〜どんな漫画でも作ります〜』にはそれと張り合えるおもしろさがあると思います。 また話の筋と関係のないことですが、誤字や不自然な日本語がほとんどないので 「何回見直したんだろう。それとも誰かに文章をチェックしてもらったんだろうか」 みたいなことを考えながら読ませていただきました。 今後も隙名さんが小説への情熱を絶やさず、おもしろい作品をお書きになることを応援しています。