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「二人組作って」 by Unknown

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 数年前、全国の高校のクラス定員は41人に統一された。すべてはこの日のため、クラス全員に2人組を作らせて余った1人を殺すデスゲームを行うためだった。

レビュー(ネタばれ注意)

 高校の41人クラスで2人組を作らせて余った1人を殺すという「デスゲーム」を描いた小説。二昔ほど前に出版されて社会問題になった小説『バトル・ロワイヤル』を彷彿とさせる。基本はコメディだが、サスペンスやヒューマンドラマの要素もある。

 この小説でまずすごいのは、41人クラスでみんなに2人組を作らせて最後に余った1人を殺すという非凡な発想だ。体育の授業なんかで2人組を作らされる時に居心地の悪さを感じた人は割に多いとおもうが、そこから話をふくらませて1つのエンターテイメント作品を作り上げてしまったのには恐れ入る。高校生が殺し合うゲームを書けと言われたとしても、私にはちょっとこんなアイデアが出せそうにない。

 第二の見どころはギャグのおもしろさだ。地の文、会話文を問わず、ストーリーにからめたナチュラルなジョークが次々と出て来るのである。自嘲的な言葉づかいとか悪態のつき方に特徴がある。たとえば、このデスゲームに関して担任の教諭が

俺はまじで言っている。三年前から、全国の高校の全クラスの定員が40人でなく41人に統一されている理由が分かるか。全ては今日の為。余ったゴミを間引く為だ。今日十月十日は、全国の全ての高校の全ての学年で同じことが行われる。詳しくは言えないけど、これは教育委員会のあれで定められていたことだよ

 と言うせりふがある。全国の高校のクラス定員を41人に統一するという法律の馬鹿馬鹿しさがすごくおもしろい。

 次の箇所もよかった。このゲームのために出張して来たという特殊部隊員が、騒ぐ学生たちを黙らせるシーンだ。

「黙れこの糞ジャパニーズどもが!! それ以上騒いだら威嚇射撃するからな!!!!」

 銃口を天井に向けて、SATが般若みたいな表情で恫喝している。
 すると面白いように全員の叫びが止んだ。
 俺は思った。
 ……最大で威嚇射撃なら別にずっとうるさくしてても平気じゃね?

 まったくだ。威勢がいいのか悪いのか分からないせりふである。
 次の担任のせりふも主人公の見かけ倒しぶりがおもしろい。

めがねかけて一見真面目そうに見えて、宿題の提出率死ぬほどカスだし、頭よさそうに見えて成績滅茶苦茶悪い。クラスで下から二番目だぞ。

 ちゃんと宿題出したらいいのに……。このせりふの後で言われた本人も自嘲する。

めがねのくせに宿題の提出率だって死ぬほど悪い。めがねのくせに提出率悪いとか、何のためのめがねだよ。死ねよまじで。俺なんて。

 この小説のもう一つの見どころは、人間の孤独と喜びの描き方にある。主人公の斉藤は社会不適合者として取り上げられて散々馬鹿にされる。でも、彼に限らず、人間というのは多かれ少なかれ孤独だ。よく読めば脇役のクラスメートたちだって誰かと2人組になるために必死になっている。ペアを組むことに初めから確かな自信を持っている者は意外と少ないのかもしれない。 
 しかし、彼もただ馬鹿にされるだけでなくて、いいこともある。坂本さんという女子にかばってもらうのだ。

え、いや、だって俺なんてまじで生きてる価値ないから……
 と言う彼に対し、坂本さんは
あるって!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 と言い返し、自分と組もうと提案する。しかし、斉藤はそれに感激したことで死ぬことを受け入れ、自ら志願して殺される。
 ひとりぼっちの彼はそもそも生きるのが楽しくなくて
実は俺は、ずっと昔から死にたいと思っていたんだ!!!!!!!
 と自分でも言う。しかし、
先生、余ったので俺をぶっ殺してください
 と言って実際に死ぬことになった時に彼は泣く。普段は死にたいと思っているくせに、いざ殺される段になって自分が死にたくないことに気づいたのだ。それでも結局、クラスの女の子にやさしくしてもらったことに満足したのと、今後の人生にあんまり期待していないことから彼は潔く死ぬ。この時の彼の気持ちが私にはよく分かる気がする。

 斉藤が死んだ後で、坂本さんが実は担任とグルであり、斉藤をかばったのも芝居だったことが明らかになる。これが話の落ちであり、駄目人間が人に好かれることがあるわけないだろ、という強烈な皮肉になっている。
 だけど私はそれでもかまわないんじゃないかと思う。斉藤は騙されていることを知らずに死んだのだし、一番大事なのは
………………なんで分かってくれないの!? 生きてたら良いことあるよ!
 と言った坂本さんに対して
――ありましたよ。既に
 と答えた彼の気持ちではないだろうか。

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