積まれた本

ネット小説名作レビュー

ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ by てこ

ジャンル

長さ

あらすじ

 高校生の坂本君が診察のために上着を脱ぐと、彼の肩には人の顔の形をした瘡(かさ)があった。瘡はそれを診る女医に噛みつこうとするが、すんでのところで失敗し、レーザー光線で治療される。断末魔の叫び声を上げて、人面瘡は醜い傷痕になった。
 3回目の診察の日、坂本君は予約をすっぽかして病院へ来ない。悪い予感を覚えた彼女は彼の家まで様子を見に行くことにした。

レビュー(ネタばれ注意)

 いい具合に気持ち悪いホラー小説。これからやって来る夏の夜にさらっと読みたい1作だ。

 人の顔みたいな形のでき物、人面瘡をあつかった作品で、そのかさの気持ち悪さにふさわしく、話の書かれ方もなかなか気味が悪い。この小説はヒロインの女医が男子高生の肩にできた人面瘡を診察するシーンから始まるのだが、初っ端から瘡は女医の顔に噛みつこうとする。最初からガンガン飛ばしていくスタイルのホラーらしい。そのシーンがこちら。

「危ない! 先生!」
「きゃっ!?」
 その途端、私は仰け反った。『肩』についた顔が嚙みつこうとしてきたのだ。坂本君が咄嗟に身をよじっていなかったら、今頃私の鼻はもぎ取られていたことだろう。
「気をつけた方がいいですよ。『こいつ』は、絆創膏だって魚の骨だって、飲み込んでバリバリ噛み砕いちゃうんですから……」
「…………」
 彼の肩についた顔が、まるで飢えた野犬のように低い唸り声を上げながら笑みを浮かべていた。

これは恐い。気持ち悪い上に、人間に噛みついて危害を加えようとするのも恐い。
 さらに、その次のシーンは

「……ァアアアアアア!!!」

から始まる。何なのかと思ったら、レーザー光線で焼却される人面瘡の断末魔の叫び声なのだった。治療には成功するものの、女医は人を殺してしまったかのような罪悪感を覚える。ホラーらしい気味の悪さと絶妙な後味の悪さがある場面だ。

 1週間後、高校生の坂本君は再び女医のもとを訪れる。前に治療したにもかかわらず人面瘡の数は2つに増えていた。人面瘡たちはまた、気味の悪いの叫び声とともにレーザー治療にかけられるのだが、お腹にある方の瘡はしぶとくて完全には除去できず、半死半生のような状態になる。この描写が一層気持ち悪い。次に引用するのがそのシーン。

赤く腫れ上がった腹に、螺旋状に歪んだ顔だった『何か』がピクピクと蠢いている。
 私はひたすらそれを見ないように心がけた。死にかけた男のその表情は苦悶に満ちていて、何よりまだ『死にきれていない』……所々生きているかのように、坂本君の腹の動きに合わせて『動いて』いる。

 その後、診察をする女医も人面瘡のことが気になるようで、彼女は坂本君のことを学校に問い合わせる。その結果、彼が根暗で、放課後に小動物を捉えては解剖していたという噂を聞く。噂はあくまで噂だが、そういう行いの悪さが祟って呪わしい病気を得たのだとしたら、うそ寒い気持ちになる。

 それから先、治療の予約があるにもかかわらず坂本君は病院へ来なくなる。心配した女医は彼の家を訪ね、1週間閉じこもったまま出て来ない坂本君の部屋の戸を開ける。すると、坂本君の体は人面瘡でびっしりと埋まっていて、部屋の中のあらゆる物が噛みつかれて破壊されている。
「怖い……助けて……先生……」
 と言いながらも坂本君は体中の無数の口で女医に襲いかかり、噛みつかれた彼女は凄絶な最後を迎える。スプラッター要素をも含むホラーなのだった。

 ところでこの小説、意味の分からない顔みたいなものがいっぱい並んでいるタイトルからして、もう気持ち悪い。よく見たら章ごとのタイトルも、この変な顔みたいなのが段々増えていってやっぱり気持ち悪い。狂気を感じる。ついでに読み方も分からない。
 あんまり奇妙な題名なので誰かがふざけて書いた小説なのかとも思ったが、念のために中身を確かめてみたら真面目なホラー作品だった。見逃さなくてよかった。

コメントする