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河童を彼氏にした場合 by せっか

ジャンル

長さ

  • 短編
  • 11,104 文字
  • 22 分ぐらいで読める

あらすじ

 学生の私は河童の河僂耶(かるや)とつき合っている。しかし、彼がいつも飄々としてあまりに淡白なので、ある時情緒不安定になって家に引きこもってしまう。河僂耶は差し入れを持って来たりして気にかけてくれるが、顔を合わせることのないまま河童の習慣に従って冬籠りに入ってしまった。河僂耶に会えない冬を悶々と過ごした後の花の時期に、私は2人がはじめて出会った河原へ出かける。

レビュー(ネタばれ注意)

 河童の恋人との交流を独白形式で描いたハイセンスな和製ファンタジー。河童の描写がいかにも自然なので、「河童ってこういう生き物なんだな」と現実味をもって感じることができた。
 はっきりしたことは言えないが、この作品は芥川龍之介の短編『河童』を下敷にしているようでもあり、モノローグ形式の文章や、河童の外見などに共通点が見られる。でも、単なる芥川龍之介のまねでは絶対にない。主題からしてまったく違うし、人間の女性と河童の細やかな心の交わり、和歌を用いたロマンス、プレーンな文章からにじみ出る女らしさなどはこの小説独自のものだ。河童の名前も、芥川龍之介の『河童』では西洋風であるのに対し、本作では漢字表記になっている。これも、ことによると和風のファンタジーであることを意識しているからなのかもしれない。(追記:実際には、特に参考にした作品はないとのことです。)
 ところで、河童の河僂耶は最後まで飄々とした態度を貫くが、彼がヒロインのことをどう思っているかは後書きの和歌を読むと分かる(両首とも小倉百人一首の収録歌)。

風をいたみ岩打つ波の己のみ 砕けて物を思ふころかな
(大意: 私はあなたをこんなに思っているのに、全然手ごたえがないからつらい)

と詠むヒロインに対して、

かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを
(大意: 私が燃えるような思いを抱いていることをあなたは知らないのだ)

と河僂耶は返している。

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