積まれた本

ネット小説名作レビュー

虚構世界の弓使い by 釜飯より生まれし男

ジャンル

長さ

  • 短編
  • 28,329 文字
  • 57 分ぐらいで読める

あらすじ

 極度のあがり症である小日向瀬奈は、女子校に入学しても相変わらず「ぼっち」だった。あがり症改善の目的もあり、瀬名はクラスメートの話を横聞きして興味を持った「アナザー・ディメンション・ワールド・オンライン」というVRMMOを親に買ってもらう。ゲームの中の瀬奈は趣味でやっているアーチェリーの腕前と偶然の幸運によってあっという間に力をつけ、「姿なき弓兵」のあだ名を持つ有名人になる。

レビュー(ネタばれ注意)

 近年ネット小説ではやっている、「VRMMOもの」をはじめてとり上げた。VRMMOというはバーチャルリアリティーを用いた未来のテレビゲームで、実際に自分がその世界にいるような体験ができる。

自分の読みたかった小説がなかったので自分で書くことにしました。初心者ですがよろしくお願いします。

 と著者はコメントしているが、それにしてはくせがなくて読みやすい、安定感のある文章だった。読みたい小説がなかったから自分が書いた、という創作意欲と意志力に拍手を送りたい。とても数が多いこの手のネット小説の中で、この作品はすごく上手におもしろく書かれているし、ちゃんとしたあらすじが用意されているのも読む方としてはすごく助かる。

 さて、この小説は何といってもまずエンターテインメントだ。①人見知りで友だちのいない ②美少女が ③ゲームで ④敵をやっつけて ⑤最後は友情を育むという、エンターテイニングな要素をふんだんに詰め込んだ話なのである。ありがちな感想ではあるけど、あがり症の美少女が、慣れないゲームの中でめきめき力をつけ、姿も見せずに弓矢でばしばし敵をやっつけていくところが気持ちよかった。この痛快さは、アクション映画を見ているのと近いかもしれない。どれだけ強くなってもひかえ目にふるまうヒロインの人柄も好印象。
 
 本作はまた、現実世界を生きる高校生であるヒロインの瀬奈がゲームを通じて人見知りを克服し、友だちを作るというストーリーでもある。ゲームの中では誰よりも強く、学校での成績は学年トップで、器量もよく、まともに学校に通えないぐらい病弱だったのになぜかアーチェリーの選手として全国トップの実力を隠し持っている彼女は、はっきり言って人間離れしている。しかし、どれだけすぐれた能力があっても、彼女の本性は1人ぼっちの人見知りだ。瀬奈はゲームの中でさえ、友だちができた時には

ぃぃぃぃぃぃいいいいやっほぉぉぉぉぉぉぉう‼︎

 と言って喜んでいる。おとなしいかと思ったら意外と感情表現が激しい。そして、とうとうゲームの外で人生はじめての友だちができた時は涙を流して感激し、親に赤飯を炊いて祝ってもらう。そういうストレートな人情がいい感じの小説だった。

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