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猫と月 by 猫沢八郎

ジャンル

長さ

  • 掌編
  • 160 文字
  • 0 分ぐらいで読める

あらすじ

ふと君を探してしまう。こんな素敵な夜だから。
(一部を作品より引用)

レビュー(ネタばれ注意)

 猫が見た月を描いた短い詩。

いつも見てるね。

 の一文から始まる文章は、無駄がなく洗練されている。擬人化された月は人間が見るのとはちょっと違っていて、この見方が詩をロマンチックにしている。この猫は、嬉しい時や寂しい時には月に声をかけてしまいそうになるという。何を見ているかも分からない遠くにいる相手でありながら、

不思議だね
なんとなくそばにいてくれてる気がするよ。

と月を好意的にとらえているのだ。
 最後の一連

ふと探してしまうよ。
こんな素敵な夜だから。

という気持ちは人間にも分かる。月見なんかの特別な場合じゃなくても、いい感じの夜には月を見上げたくなる。

 ところで、この詩の大きな特徴は挿絵がついていることだ。これが単なる絵ではなくて、独特な方法で描かれたおしゃれな絵画作品である。著者の説明によれば「白線画」というらしい。黒っぽい背景に白線で描かれていて、絵の中の猫と月はそれぞれ幾何学模様で装飾されている。ここに掲載できないのが惜しい。著者の自己紹介によると「文に絵を描く、ではなく、絵に文を書く」とのことで、絵に対して深いこだわりがあるようだ。同じ著者のほかの作品にも同じ技法で描いたと思われる絵がついている。
 私の意見では、絵がいい、文がいいだけでなく、絵と文章の相乗効果がいいんだと思う。絵だけがぽつんとあったらもの足りたりないかもしれないが、短い文章をつけることで、適当な手ごたえというか、充実感みたいなものが得られる。文章を読む人間の心情も、絵があれば当然それに影響される。きれいな絵を見ながら読めば、話の内容まできれいな気がしてくるのが人の心ではないだろうか。

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2つのコメント

2016-12-18 01:20:56

今さら気がつきました!!!!!!! 猫沢八郎と申します!! こんな風に書いていただいてることがわかって、 今、ものすごく感激しております!!! ありがとうございます!! 今後とも絵も文章も精進してまいりますので、 どうぞよろしくお願いいたします!!!

Koji
2016-12-27 11:07:13

コメントありがとうございます! 返信が遅くなってすみません。 『猫と月』は、このブログではじめて取り上げた詩として思い出深い作品です。 アラクネ文庫はネット小説のレビューを名乗りつつ詩やエッセイもカバーしていて、サイト開設以降レビューするべき詩をちょくちょく探していたのですが、なかなか見つかりませんでした。 それで、星空文庫で猫沢さんの詩を読んだ時に、 「お、意外なサイトにええ感じの詩がある」 と思って早速レビューさせていただくことにしたのでした。 詩でありながら絵にこだわっているのも、インターネットに適したおもしろいやり方だと思います。 今のところ代表作(?)として『猫と月』だけを取り上げさせていただいていますが、他の詩も拝読していますよ!