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ネット小説名作レビュー

サイコパスハンター・黒野零 by 春風小夏

ジャンル

長さ

  • 短編
  • 46,450 文字
  • 1 時間 33 分ぐらいで読める

あらすじ

 地方都市の警察署に勤務するグラマーな女性刑事、笹原杏里は就任後はじめて事件を任される。だがそれは動機不明の猟奇密室殺人というとんでもないものだった。事件は連続殺人に発展し、被害者がみな若い女性で、遺体から子宮が持ち去られ、子供の頃神隠しにあっているという共通点があった。マンションの監視カメラからは犯人の映像も手に入るが、その男には、のっぺらぼうのように顔がなかった。

レビュー(ネタばれ注意)

 著者の書いた小説情報によれば、この作品はミステリーであり、ガールズラブであり、サスペンスであり、サイコホラーであり、スプラッターである。結局何やねん! と思ってしまうが、一言で言うとホラー要素のあるミステリーだ。だからミステリーまたはホラーの好きな人が読むことをお勧めする。
 なお、タイトルとあらすじではサイコパスが強調されているが、話の主眼はサイコパスにはない。ヒロインの1人の黒野零もサイコパスとして紹介されているが、どちらかといえば妖怪少女という方が近い。私はこの小説を読んでゲゲゲの鬼太郎を連想した。

 本作の見どころの1つは、殺人犯の意外な動機にある。SF的な動機なのでミステリーとしては反則だと言う人もいるかもしれないが、ちゃんと考えて書かれているので私はありだと思う。なお、犯人の動機に関わるエピソードは、同じ著者によって独立した別の作品としても書かれており、話がしっかりしているのも頷ける (参考: 『赤い真珠は少女の涙』)。

 第二の見どころはホラーである。本作は小説投稿サイト『小説家になろう』の公式企画「夏のホラー2016」の参加作品であり、ミステリーとしてのみならずホラーとしてもおもしろい。犯人の描写の気持ち悪さはなかなかのもので、最後に彼と対決するところも緊張感があっていい。この小説を読んだ晩、私は被害者と同じ位置で自分の腹を切らされる夢を見た。夢の中だけど結構痛かった。
 私事で申し訳ないが、実は私はホラーが大好きだ。だからこの夏が終る前に何とかおもしろいホラー作品を見つけてレビューしたいと思っていたのだが、これまでちょうどいい小説を見つけられずにいた (自分で読む分におもしろいものはいくつかあった)。今回、少なくとも1本のホラーを紹介できて嬉しく思う。

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