積まれた本

ネット小説名作レビュー

サイコパスハンター・零 ~百合と髑髏の狂想曲~ by 春風小夏

ジャンル

長さ

  • 短編
  • 31,282 文字
  • 1 時間 3 分ぐらいで読める

あらすじ

 地方都市に勤務する女性刑事、笹原杏里はグラマーな体型をいかして連続女性傷害事件のおとり捜査のおとりになる。杏里のルームメイトの美少女、黒野零の活躍によりこの事件は解決するが、すぐに別の事件が発生する。女性を殺して頭部を持ち去るという猟奇的な連続殺人事件で、手がかりはなかなか見つからない。

レビュー(ネタばれ注意)

あの、特異体質美女&サイコパス美少女のコンビが帰って来た!
待望の『サイコパスハンター・零』シリーズ第2弾!!
~百合と髑髏の狂想曲~

 勝手にこんなキャッチコピーをつけたら著者に怒られるかな……。というわけで今回は、以前アラクネ文庫で取り上げさせてもらったSFミステリーホラー (?) 『サイコパスハンター・黒野零』の続編、『サイコパスハンター・零 ~百合と髑髏の狂想曲~』をレビューをする。

 一言で言うと、この小説は刑事もののミステリーだ。しかし、普通のミステリーにはない特徴がある。1つは、主人公である笹原杏里と黒野零がそれぞれ、人魚の肉を食べた(らしい)特異体質の女性と「サイコパス」であることだ。ただし、ここで言う「サイコパス」は本シリーズで使われる専門用語のようなもので、一般的な用法とちょっと違う。黒野零は実際には妖怪少女というのが近い。なお、刑事である杏里が追いつめる犯人たちもサイコパスであり、通常の人間ではない。
 2つ目の特徴は、所々ホラーあるいはスプラッターな描写があること。ただし、『夏のホラー2016』という企画に参加していた前作よりはホラー要素が薄くなっている。
 主人公がグラマーな女性刑事でレズビアンであることも本シリーズの特徴だと言えるだろう。杏里がセクシーな服を来て連続傷害事件の囮捜査を行うことや、杏里と零の付き合いが作品の1つのテーマになっていることを考えると、この設定は重要だ。

 前置きが長くなったが、この小説の見どころを紹介していきたい。1番のおもしろみは、犯行動機の奇抜さだ。すでに言ったように犯人は普通の人間ではないサイコパスであり、動機も異常である。しかし、実は本当に悪いのは彼ではなく、この事件には黒幕がいる。それはヤドカリだ。……ヤドカリ!? そう、女性たちを殺して頭部を持ち去った犯行の理由は、ヤドカリの住みかにする頭蓋骨を手に入れることだったのだ。この動機は予測できない。事件が赤ん坊、小学生、中学生の連続殺人だったのも、成長するに従って住みかを取り替えるやどかりに、順を追って大きくなる住みか(頭蓋骨)を提供するためだった。ここで、ヤドカリの習性を連続殺人に結びつけているところがすごくおもしろいと思った。著者の活動報告によると、以前ショートショートで書いたオチを発展させたということで、犯行動機に意表をつくこだわりがあるのも理解できる。ちなみに、前作『サイコパスハンター・黒野零』の犯行動機も、それまでに書いたショートショートを発展させたもので、とてもおもしろかった。

 本作の次なる見どころは、ミステリーに妖怪テイストをとりこんだところだ(ただし、作中には妖怪という言葉は出て来ない)。黒幕がお化けヤドカリだったことは犯行動機とも関係がある。
 前作ほど大きな戦いはなかったものの、零の人間離れした身体能力や長い舌をいかしたアクションは、ヒーローものを読んでいるようでわくわくする。私がこのシリーズを読んでいる時に『ゲゲゲの鬼太郎』を連想するのは前作のレビューにも書いた通りである。
 敵と戦う時に零が身につける着物も好きだ。彼女の戦闘服は丈の短いセクシーな浴衣みたいなデザインであり、木の葉のような模様が一面にあしらわれている。この模様は実は女の目であり、急に開いて相手をにらみつけたりする。かっこいい。俺もほしい。男やから着られへんけど。

 ところで、主人公の杏里は基本的に零と恋人関係にあるレズビアンだが、今回は男の先輩刑事にどきどきするシーンがあってかわいかった。

コメントする