積まれた本

ネット小説名作レビュー

少女漫画じゃない! by 水無 仙丸

ジャンル

長さ

  • 短編
  • 13,084 文字
  • 26 分ぐらいで読める

あらすじ

 高生二年生の鬼塚夢見は、片思いの一ノ瀬君と素敵な恋をするため縁結びの神社で少女漫画の神が宿る勾玉を手に入れる。だけど、古くさい不良にからまれたりトレジャーハンターにからまれたりでどうも様子がおかしい。実は神主の間違いのせいで、夢見の勾玉は少年漫画の神の勾玉と入れ替わっていたのだ。それでも運よく一ノ瀬君に近づくチャンスをつかむが、彼も実は推理漫画の神にとりつかれていた。

レビュー(ネタばれ注意)

 テンポよく進むストーリーと気のきいた文章が心地いい、少女漫画風のラブコメ短編小説。SFの要素が混じっているが、話づくりがしっかりした王道の学園ラブコメとも言えるかもしれない。

 少女漫画みたいな恋がしたいヒロインが誤って少年漫画の神にとりつかれるというストーリーで、おもしろそうな設定に恥じない出来栄えの、良質なエンターテインメント作品だった。ヒロインの鬼塚夢子は神社で少女漫画の神が宿る恋のお守り(勾玉)を手に入れるのだが、野球部のキャプテンにからまれ、時代錯誤的な不良にからまれ、トレジャーハンターにからまれ、リア充女にからまれ、銀行強盗にもからまれる。そこに夢子の片想いの相手である一ノ瀬君もからんできて、恋と冒険(?)がバランスよくミックスされたいい感じの話になっているのだ。おもしろいイベントが続々と起こるのであきを感じず、そのおもしろさを保ったままこの短編は幕になる。テンポのよさ、設定のいかし方、しっかりしたストーリー、どこをとっても隙のない小説だった。

 でも、読みやすいのは単に話がおもしろいからではない。漫画を思わせるライトな話を書いてはいるが、文章もむちゃくくちゃうまいのだ。分かりやすくリズム感があって、その上ギャグもおもしろい筆づかいはアマチュア離れしていると思う。
 例として小説のワンシーンを引用する。

 次に金髪イケメンが現れて「放課後、校門のとこで待ってろよ」と可憐に向かってやや恥ずかしそうに言って去って行った。さらにその次は石神井先生が現れて「こら、いつまでもおしゃべりしてるとHR始まるぞ」と、可憐にウインクをして教室に向かって行った。
 ……う、
 うう、
 うううううっ、
「うらやましいいいいッ! 可憐ばっかりずるいよ! 私だってイケメンに四方八方から言い寄られたい!」
「私も最初はそう思ってたけど……本当に好きな人に振り向いてもらえないと意味がないんだなってことがだんだん分かってきたよ」
「何それ全然共感できない!」

 さらっと読めるのは内容が薄いからではなく上手に書いてあるからだ。こんな自然な文章はなかなか書けるものじゃない。

 とまあ色々言ったけど、要するにハイクオリティでおもしろい小説だと言いたい。最後に私がむちゃくちゃ笑ったシーンを引用して今日のレビューを終わる。

「――ちょっと可憐。どういうこと?」
 私は可憐の肩を力いっぱいつかんだ。
「ど、どうしたの夢子、顔怖いんだけど」
「なんかおかしいじゃん。明らかにおかしいじゃん」
「え、何が?」
「可憐みたいなAカップ女子にイケメンが三人も言い寄るなんて不自然じゃん」
「Aカップ関係ないでしょ謝れぶっ飛ばすぞ」

コメントする