積まれた本

ネット小説名作レビュー

とあるアラサー女子の10月の日記 by 猫の玉三郎

ジャンル

長さ

  • 掌編
  • 1,912 文字
  • 4 分ぐらいで読める

あらすじ

とあるアラサー女子の、愛と勇気と哀愁と笑いの日記。笑うもよし、泣くもよし。等身大の切なさが、ここにある。——「残り少ない女子力を、またひとつ手放した。」
(著者によるあらすじを引用)

レビュー(ネタばれ注意)

 アラサーぼっち女子の愉快な生き様を描いた日記形式の小説。さりげなくもハイセンスな良作。短いので4分ぐらいで読めるだろう。

 本作の見どころまず、日常系ジョークのおもしろさにある。独身アラサー女子の自虐的なネタが中心になっていて、日常的な話でありながら何かすごいおもしろい。特によかった箇所をいくつか引用してみる。

20**年 10月 28日

突然、後輩の加藤ちゃんが意味不明な事を言ってきた。
「センパイはぁ、今度のハロウィンパーティの仮装、何するんですかぁ? あたしぃ、魔女にしよっかなぁって思っててぇ」
そんなもん、しらん。なんじゃ仮装パーティって。めっちゃ楽しそうじゃないか。
「……え、それ知らないんだけど」と言ったら、急にあわて出して「ごめんなさぁーい」と去って行った。

後輩が薄情すぎて涙が出る。長上に礼をつくす美しき日本文化はもはや失われたらしい。

20**年 10月 25日

今日お隣に、顔がイケてるメンズが引っ越してきた。ご丁寧に、焼き菓子の詰め合わせをもらった。神がかってるくらいのイケメンだった。もったいないので、お菓子はしめ縄で囲って、しばし祀る事にする。

その間に私は、各地に散らばった女子力を、探しに行かなければならない。戻ってこい。私の女子力。出動の時だ。

この短い文章にいくつのギャグが含まれていることか。「各地」ってどこ。「顔がイケてるメンズ」も1人なのか複数いるのかどっちだ。

※「孤独死対策に、老後は毎日寝る前に化粧して、棺桶で寝よう」という話を、中町さんとしたのを思い出した。夏場のエアコンは必須だ。

女子力を期待できそうもないやりとりだ。

 こんな風に文章の内容がおもしろいだけでなくて、言葉使いにもちょくちょくとてもおもしろいものがある。上でふれた「顔がイケてるメンズ」もその1つだ。ほかに私が好きなのが、作中に何度か出て来る「闇ポエム」である。まじめなのかふざけてるのかよく分からん感じがいい。
 「残り少ない女子力を、またひとつ手放した」というフレーズは著者のお気に入りでもあるのか、本文中だけでなくてあらすじにも使われている。
 話の後半には「私が美しすぎて」というフレーズを利用した言葉遊びも出て来る。

 冒頭と終わりもなかなかよかった。

20**年 10月 3日

はあ、もう10月か。早い。
(だいたい月初めはこれを言っている)

という一節で話は始まるのだが、これはよくできたあるあるネタだと思う。そして最後は

私もひとりでコッソリ、ゾンビメイクをしてみた。恥ずかしくて、その後すぐ顔洗った。

すっぴんも、充分ゾンビだった。

で終わる。どんな顔なのか気になる。

 ちなみに、この小説には以下のような後書きがある。

この日記はフィクションです。本当です。玉三郎はちゃんとシャンプーとコンディショナー分けて使ってます。

 ここで著者の玉三郎さんは、残り少ない女子力をまだ手放していないことを主張なさっている。きっと、キュートでおもしろくてゾンビみたいな女性なんだと思う。

コメントする