積まれた本

ネット小説名作レビュー

綿の木 by ハインリッヒ富岡

ジャンル

長さ

  • 掌編
  • 461 文字
  • 1 分ぐらいで読める

あらすじ

 地面に生える綿の木はある日、自由に海を泳ぐ魚になりたいと思いました。でも魚は犬になって陸地を歩きたいと思っており、犬は鳥に、鳥はライオンに、ライオンは人間になりたいと考えていました。そして人間は思いました。
「あー女子高生のパンツになりてー。」
 綿の木は女子高生のパンツになりました。
(一部を作品より引用)

レビュー(ネタばれ注意)

 童話の皮をかぶった謎のコメディ。500文字もない短い話の後で思いがけないおちがあり、そういう意味では王道のショートショートだと言える。

 でも、本作はちょっと問題作である。ある能天気な男が
あー女子高生のパンツになりてー。
 などと考えたせいで、色々あって1本の樹木が女子高生のパンツになってしまうからだ。これがなければ私はこの小説を童話に分類しただろう。いずれにしても、著者によればこの小説は童話であり、あらすじにも

こどもたちにこのおはなしをよんでもらいたい。

 と書いてある。あらすじでも何でもねぇ……。私としてはとりわけ子供たちにこの話を読んでもらいたいとは思わないのだが、ともかくすぐれた小説であるには違いない。

 どうすぐれているかというと、おちがすごくうまい。話の筋をかいつまんで説明すると、ある綿の木が魚になりたいと思い、魚は犬になりたいと思い、犬は鳥に、鳥はライオンに、ライオンは人間になりたいと思う。そして最後に人間が
あー女子高生のパンツになりてー。
 と思う。すると綿の木が女子高生のパンツになる。

 読み終わった時は一瞬意味が分からなかったのだが、すぐにひねりのきいたおちを理解して
「なるほど、そういうことか!」
 と思った。ポイントは2つある。綿の木は魚になりたいのだから、綿の木であるよりは魚である方が望ましい。同じく魚であるよりも犬がよく、犬よりも鳥が、鳥よりもライオンが、ライオンよりも人間がよい。そしてその人間がなりたいと望むものは女子高生のパンツ。つまり、綿の木がこの小説の中では最高の存在であるパンツになることができたというわけだ。
 もう1つのポイントは、この話に出て来る生き物の中で女子高生のパンツになれるのは、実は綿の木だけだということだ。なぜなら綿はパンツの材料だから。

 童話としては問題があるが、ショートショートとしては星新一にも負けない佳作じゃあないだろうか。

コメントする